top of page
執筆者の写真KUMA AZU ART FACTORY

タリーズのストーブ

2年振りとなる小倉井筒屋での個展は、コロナ禍という強烈な逆風の中で

ひっそりと、粛々と、息を殺して…そんなお通夜のような展覧会になるかと思われましたが

多くの方にご来場頂き、ディスタンスをとりつつも、温かい応援の言葉を頂きました。

本当にありがとうございました。


小倉にはテレビでも紹介されるサンドイッチ店や、スイーツの有名なパン屋、

ラーメン、うどん、天ぷら等々、行列ができるほどの人気店が沢山あります。

けれども私は、そういった人の賑う所はどうも苦手で、

一人でゆったりまったりと過ごしたい質です。

密を避けようという昨今の風潮は、実は少し過ごし易かったりもします。

マスクにはうんざりですが。


井筒屋横のタリーズコーヒーには、昔ながらの灯油ストーブがあって、

朝、そこから一番近い席を陣取り、ゆったりまったりブラックを啜るのが、

個展中の最高の愉しみでした。


週明けに日本列島を襲った大寒波。

海から近い小倉の街でも、頬(マスク?)を刺すような凍える風が、

人と人とのディスタンスを切り裂きながら、街中を吹き荒れました。

バスを降りた私は固く身を屈めて、足早に、真っしぐらに

タリーズの灯油ストーブを目指すのでした。


「申し訳ございません、灯油を発注し忘れてしまって。」


その朝だけは、ミルクと砂糖をどっさり入れて

火の無いストーブを恨めしそうに眺めながら

できるだけ入口から遠い席で、甘ったるいコーヒーを流し込みました。



Yorumlar


bottom of page